子どもたちが自然に笑顔になる「楽器遊び」。タンバリンやカスタネットを手にして、リズムにのって体を動かす姿はとても微笑ましいものです。
保育園や幼稚園では、楽器遊びを通して「音を楽しむ心」や「友だちと一緒に表現する力」を育てることができます。この記事では、楽器遊びのねらい・年齢別の取り入れ方・おすすめの楽器や曲をわかりやすく紹介します。
楽器遊びとは?保育で取り入れる魅力とねらい

子どもの発達を支える「音あそび」の効果
楽器遊びは、音を鳴らすことを通して子どもの感覚を刺激する活動です。音の強弱やテンポを感じながら、自分の手で音を出すことで「音の変化」や「リズムの違い」に気づきます。
これにより、聴覚や運動感覚、集中力が自然に育まれていきます。
また、音が鳴るたびに「できた!」という達成感が得られるため、自己肯定感を高めるきっかけにもなります。言葉で表現するのがまだ難しい子どもにとっても、音は気持ちを伝える大切な手段です。
表現力・集中力・協調性を育てる楽器あそびのねらい
保育での楽器遊びには、以下のようなねらいがあります。
- 音やリズムを感じ取り、自由に表現する力を育てる
- 友だちと一緒に鳴らすことで協調性を育む
- 体を使ってリズムを取ることで運動能力を伸ばす
- 集中して音を聴く力を身につける
このように、楽器遊びは「遊びながら育つ」活動の代表格です。子どもたちは楽しみながらも、さまざまな発達の芽を伸ばしています。
年齢ごとの発達に合わせた楽器遊びのポイント
楽器遊びは年齢によってねらいや活動内容が異なります。
0〜1歳児は「音を出して楽しむ」ことが中心、3〜5歳になると「みんなでリズムを合わせる」経験が増えていきます。発達段階に応じて無理のないように取り入れることが大切です。
年齢別の楽器遊びアイデア

0・1歳児|音やリズムに親しむ感覚あそび
まだ手の動きが未熟な時期ですが、「音が出ること」そのものを楽しむ姿が見られます。
おすすめは、マラカス・鈴・太鼓など、握るだけで音が鳴るシンプルな楽器。保育者が歌を歌いながらリズムに合わせて振ってみせると、自然に興味を持ちます。
音の強弱やテンポを変えて、「早く!」「ゆっくり!」と遊びの中で変化をつけると、聴覚の発達にもつながります。
2歳児|まねっこしながら音を楽しむ楽器あそび
この時期は「まねっこ」が大好き。保育者の動きや音を真似しながら、少しずつリズムを合わせる力が育ちます。
「いっぽんばし こちょこちょ」や「アンパンマンのマーチ」など、テンポの良い曲で体を動かしながら鳴らすのもおすすめ。
楽器はタンバリン・カスタネット・手作りマラカスなど、持ちやすく音の変化が楽しめるものを選びましょう。
3・4歳児|リズムに合わせて鳴らす楽しさを感じる活動
音楽に合わせて鳴らす楽しさを覚える時期です。
「ドン・ドン・パン!」といった掛け声をつけながら太鼓やスズを叩くと、リズム感や聴く力が伸びます。
「さんぽ」や「おもちゃのチャチャチャ」などの定番曲を使い、パート分けして演奏するのも◎。
少しずつ「自分の音を意識する」ようになることで、集中力や協調性が育ちます。
5歳児|友だちと合わせて演奏を楽しむ合奏あそび
年長になると、リズムを合わせて「みんなで一つの音楽を作る」体験ができます。
太鼓・木琴・トライアングルなどのパートを分けて合奏を楽しむと、達成感とチームワークが深まります。
発表会では、「にじ」や「ありがとうの花」「勇気100%」などの人気曲を取り入れると、保護者からも好評です。
保育者がピアノでリードし、子どもたちが音を重ねることで一体感のある時間が生まれます。
保育園・幼稚園で人気の楽器と選び方

小さな子どもでも扱いやすい楽器
0〜2歳児には、軽くて音が出しやすい楽器を選びましょう。
代表的なのは以下のようなものです。
- 鈴:手首に巻きつけるタイプなら安全で安心
- マラカス:ビーズ入りで振るだけで音が鳴る
- カスタネット:指を使う練習にもぴったり
叩く・振る・鳴らすというシンプルな動きの中に、「リズムの芽」が育っていきます。
年中・年長向けにおすすめの楽器
3歳以上になると、少し複雑な操作にも挑戦できます。
- タンバリン:強弱をつけて表現が広がる
- トライアングル:余韻のある音が魅力
- ウッドブロック・木琴:音階やメロディーを感じられる
素材によって音の響きが変わるため、活動前に「どんな音がするかな?」と聴き比べる時間を設けるのもおすすめです。
安全面・音量・素材に配慮した選び方のポイント
保育で使う楽器は「安全性」と「音の大きさ」が大切です。
角のない設計や軽量素材を選び、金属製の楽器を使う場合は周囲との距離を十分に取ります。
また、音が大きすぎると子どもが驚いてしまうこともあるため、室内の広さに合わせて音量を調整する工夫も必要です。
楽器あそびにおすすめの曲と活動例

導入にぴったりなリズム曲
リズム感を育てるには、子どもたちが自然に体を動かしたくなる曲が最適です。
- 「さんぽ」(となりのトトロ)
- 「おもちゃのチャチャチャ」
- 「どんぐりころころ」
テンポがわかりやすく、繰り返しが多い曲は、初心者でも安心して楽しめます。
保育者が歌いながら手拍子をし、子どもたちが楽器でリズムを重ねると、音の一体感が感じられます。
合奏や発表会にも使える人気曲
少し慣れてきたら、みんなで音を合わせる合奏に挑戦してみましょう。
- 「にじ」
- 「ありがとうの花」
- 「勇気100%」
- 「ミッキーマウスマーチ」
曲ごとにリズムパートを分け、「太鼓チーム」「鈴チーム」などにすることで、役割意識や協調性が育ちます。発表会のプログラムとしても華やかで人気です。
季節の行事と組み合わせた楽器あそびアイデア
行事のテーマに合わせて楽器遊びを取り入れると、より一層盛り上がります。
- 春:「チューリップ」「ことりのうた」で新生活のワクワクを表現
- 夏:「アイスクリームのうた」「うみ」で開放的にリズムを楽しむ
- 秋:「まつぼっくり」「どんぐりころころ」で季節を感じる音づくり
- 冬:「あわてんぼうのサンタクロース」で合奏やベル演奏に挑戦
季節を感じながら音を鳴らすことで、子どもたちの感性が豊かに育ちます。
まとめ|音を通して広がる表現とつながり
楽器あそびで育つ子どもの可能性
楽器遊びは「音を楽しむ」ことを通して、子どもたちの心・体・社会性をバランスよく育てます。
自分の出した音を聴き、友だちと合わせて響かせる体験は、協調性や思いやりを育てる貴重な時間です。
保育者が意識したい「見守り」と「共感」の姿勢
楽器遊びの中で、うまくできなくても「いい音だったね」と共感することで、子どもは安心して挑戦を続けられます。
音を通じた表現は、一人ひとりの個性を輝かせるチャンス。
保育者の優しいまなざしと伴走が、子どもたちの音楽体験をより豊かなものにしてくれます。
音で心を通わせ、友だちと一緒に表現を楽しむ――それが楽器遊びの魅力です。
毎日の保育に、少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。

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